テーマ:西郷南洲遺訓

国の凌辱せらるるに当りては… 【西郷南洲翁遺訓解説】 第十八条 ①

談、国事に及びし時、慨然として申されけるは、国の凌辱せらるるに当りては、たとえ国を以て斃るるとも、正道を踏み、義を尽くすは政府の本務なり。然るに平日金穀理財の事を議するを聞けば、如何なる英雄豪傑かと見ゆれども、血の出る事に臨めば、頭を一処に集め、ただ目前の苟安を謀るのみ。戦の一字を恐れ、政府の本務を堕しなば、商法支配所と申すものにて、さ…
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正道を踏み、国を以て斃るる・・・ 【西郷南洲翁遺訓】 第十七条

正道を踏み、国を以て斃るるの精神なくば、外国交際は全かるべからず。彼の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮を招き、交親却って破れ、終に彼の制を受くるに至らん。 (大意)正しい道を踏み、いざとなれば国の命運を賭して戦うぐらいの覚悟がなければ、外国との対等の交際関係を維持することはできない。相手国の強大さ…
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節義廉恥を失いて、国を維持するの道決してあらず 【西郷南洲翁遺訓解説】 第十六条

節義廉恥を失いて、国を維持するの道決してあらず、西洋各国同然なり。上に立つ者下に臨みて利を争い義を忘るる時は、下皆これに倣い、人心忽ち財利にはしり、卑吝の情日々長じ、節義廉恥の志操を失い、父子兄弟の間も銭財を争い、相讐視するに至るなり。かくの如く成り行かば、何を以て国家を維持すべきぞ。  徳川氏は将士の猛き心を殺ぎて世を治めしかども、…
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常備の兵数もまた… 【西郷南洲翁遺訓】 第十五条

常備の兵数もまた、会計の制限に由る。決して無根の虚勢を張るべからず。兵気を鼓舞して精兵を仕立てなば、兵数は寡(すくな)くとも、折衝禦侮ともに事欠くまじくなり。 (大意)常備軍の兵数も、他の事業同様、予算の制限を超えてはならない。虚勢を張って、根拠のない軍備の拡張をしてはならない。兵の正気を鼓舞して精兵に育て上げれば、兵数は少な…
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会計出納は制度の由って立つ所… 【西郷南洲翁遺訓】 第十四条

会計出納は制度の由って立つ所、百般の事業皆これより生じ、経綸中の枢要なれば、慎まずばならぬなり。その大体を申さば、入るを量りて出ずるを制するほか更に術数なし。一歳の入るを以て百般の制限を定め、会計を総理する者、身を以て制を守り、定制を超過せしむべからず。しからずして時勢に制せられ、制限を慢(みだり)にし、出ずるを見て入るを量りなば、民の…
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租税を薄くして、民をゆたかにするは… 【西郷南洲翁遺訓解説】 第十三条

租税を薄くして、民を裕(ゆたか)にするは、すなわち国力を養成するなり。故に国家多端にして財用の足らざるを苦しむとも、租税の定制を確守し、上を損じて下を虐げぬものなり。よく古今の事跡を見よ。道の明かならざる世にして、財用の不足を苦しむ時は、必ず曲知小慧の俗吏を用い、巧みに聚斂(しゅうれん)して一時の欠乏に給するを理財に長ぜる良臣となし、…
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謹賀新年

 新年あけましておめでとうございます。  本年が、日本にとって、また皆様にとって、実多き年となりますように。  本年中には、鋭意執筆に取り組んできた、ここ数年の論考の集大成である『日本人と論語』もいよいよ完成できるかと思います。  戦後生まれの新たな視点からの國體論として、できるだけ読みやすく、と考えて、まとめておりますの…
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西洋の刑法は… 【西郷南洲翁遺訓解説】 第一二条

西洋の刑法は専ら懲戒を主として苛酷を戒め、人を善良に導くに注意深し。故に囚獄中の罪人をも、如何に緩やかにして鑒戒となるべき書籍を与え、事に因りては親族朋友の面会をも許すと聞けり。尤も聖人の刑を設けられしも、忠孝仁愛の心より鰥寡(かんか)孤独を愍(あわれ)み、人の罪に陥るを恤(うれ)い給いしは深けれども、実地手の届きたる今の西洋の如くに…
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文明とは… 【西郷南洲翁遺訓解説】 十一条

文明とは道の普く行わるるを賛称せる言にして、宮室の荘厳、衣服の美麗、外観の浮華を言うには非ず。世人の唱うる所、何が文明やら、何が野蛮やらちっとも分からぬぞ。予嘗て或人と議論せしこと有り。西洋は野蛮じゃと云いしかば、否文明ぞと争う。否野蛮じゃと畳みかけしに、何とてそれ程に申すにやと推せしゆえ、実に文明ならば、未開の国に対しなば、慈愛を本と…
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人智を開発するとは… 【西郷南洲遺訓解説】 第十条

人智を開発するとは、愛国忠孝の心を開くなり。国に尽くし、家に勤むるの道明らかならば、百般の事業は従て進歩すべし。あるいは耳目を開発せんとて、電信を懸け、鉄道を敷き、蒸気仕掛けの器械を造立し、人の耳目を聳動すれども、何故、電信鉄道のなくては叶わぬぞ、欠くべからざるものぞ、というところに目を注がず、みだりに外国の盛大を羨み、利害得失を論ぜず…
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忠孝仁愛教化の道は… 【西郷南洲翁遺訓解説】 第九条

忠孝仁愛教化の道は政事の大本にして、万世に亘り宇宙に弥(わた)り易(か)うべからざるの要道なり。道は天地自然の物なれば、西洋と雖も決して別なし。 (大意)人々を忠孝、そして仁愛の道に教え導くことは政事の大本であり、永遠にして普遍の人間秩序の要(かなめ)となる道である。道は天地とともにある自然のものであるから、西洋においても同じ…
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広く各国の制度を採り、開明に進まんとならば… 【西郷南洲翁遺訓解説】 第八条

 広く各国の制度を採り、開明に進まんとならば、先ず我国の本体をすえ、風教を張り、然して後、徐(しず)かに彼の長所を斟酌するものぞ。否(しか)らずして彼に倣いなば、國體は衰頽し、風教は萎靡して匡救(きょうきゅう)すべからず。遂に彼の制を受くるに至らんとす。 (大意)広く各国の制度を採用し、開明に進もうとするならば、先ずは我が国の体(…
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事大小となく、正道を踏み、至誠を推し… 【西郷南洲遺訓解説】 第七条

 事大小となく、正道を踏み、至誠を推し、一時の詐謀を用うべからず。人多くは事の差し支ゆる時に臨み、作略を用いて、一旦その差し支えを通せば、跡は時宜次第工夫の出来る様に思えども、作略の煩いきっと生じ、事必ず敗るるものぞ。正道を以てこれを行えば、目前には迂遠なる様なれども、先に行けば成功は早きものなり。 (大意)どんな事でも、正道…
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人材を採用するに、君子小人の弁、酷に過ぐる時は… 【西郷南洲翁遺訓解説】第六条

人材を採用するに、君子小人の弁、酷に過ぐる時は却って害を引き起こすものなり。その故は開闢以来世上一般、十に七八は小人なれば、能く小人の情を察し、その長所を取り、これを小職に用い、その才芸を尽くさしむるなり。東湖先生申されしは「小人ほど才芸ありて用便なれば、用いざればならぬものなり。さりとて長官にすえ重職を授くれば、必ず邦家を覆すものゆえ…
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幾たびか辛酸を歴て志始めて堅し… 【西郷南洲翁遺訓解説】第五条

或る時、「幾歴辛酸志初堅 丈夫玉砕愧甎全 一家遺事人知否 不為児孫買美田(幾たびか辛酸を歴て志始めて堅し、丈夫玉砕して甎全を愧ず、一家の遺事人知るや否や、児孫の為に美田を買わず)」との七絶を示されて、若しこの言に違いなば、西郷は言行反したるとて見限られよ、と申されける。 (大意)ある時、翁は「幾たびか辛く苦しい思いをして始め…
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万民の上に位する者… 【西郷南洲翁遺訓解説】第四条

万民の上に位する者、己を慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思う様ならでは、政令は行われ難し。然るに草創の始めに立ちながら、家屋を飾り、衣服を文(かざ)り、美妾を抱え、蓄財を謀りなば、維新の功業は遂げられまじきなり。今となりては、戊辰の義戦も偏に私を営みたる姿に成り行き、天…
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政の大体は、文を興し、武を振るい・・・ 【西郷南洲翁遺訓解説】第三条

政の大体は、文を興し、武を振るい、農を励ますの三つにあり。その他百般の事務は、皆この三つの物を助くるの具なり。この三つの物の中において、時に従い、勢いに因り、施行先後の順序はあれど、この三つの物を後にして他を先にするは更になし。 (大意)政治の根幹は、文(学問・教育)を奨励して盛んにし、軍備を整えて精強な軍隊を作り、農業を奨励して…
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賢人百官を総べ… 【西郷南洲翁遺訓解説】第二条

賢人百官を総べ、政権一途に帰し、一格の国体定制なければ、縦令(たとえ)人材を登用し、言路を開き、衆説を容るる共、取捨方向なく、事業雑駁にして成功あるべからず。昨日出でし命令の、今日たちまち引き易(か)うるという様なるも、皆統轄する所一ならずして、施政の方針一定せざるの致す所なり。 (大意)賢人が多くの官吏を総べ、政治権力が一つとな…
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廟堂に立ちて大政を為すは… 【西郷南洲翁遺訓解説】第一条

廟堂に立ちて大政を為すは天道を行うものなれば、いささかとも私を挟みては済まぬものなり。いかにも心を公平に操り、正道を踏み、広く賢人を選挙し、能くその職に任(た)ゆる人を挙げて政柄を執らしむるは即ち天意なり。それゆえ真に賢人と認むる以上は、直ちに我が職を譲る程ならでは叶わぬものぞ。故に何程国家に勲労あるとも、その職に任(た)えぬ人を官職を…
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