日本人の国際主義 (その弐)

 少し前に書いた記事になるが・・・・・・「日本人の国際主義(その壱)」で紹介したように、昨年11月21日、「人民網」日本語版において「東アジアサミット、最大の勝者は日本」と題された記事が配信された。  

 (引用開始)

 東アジアサミット(EAS)が先週土曜日に閉幕した。しかし、中米両国は結局共通認識に達することができず、ASEANはいくつかの承諾を取り付けたが実施にはまだ時間がかかり、新たに参加したロシアもCIS諸国とのFTA締結に忙しく、あまり熱心ではなかった。ところが驚くべきことに、これまでずっと控えめな態度で各国の動きを静観してきた日本が今回、大きな利益を上げたのだ。第一財経日報が伝えた。

 この状況に関し、中国現代国際関係研究院グローバル化研究センターの劉軍紅主任は、「現在、アジア太平洋における主な矛盾は依然として日米間の矛盾だ。しかも日本はこれまでずっと、自国にとって不利な戦略体制を瓦解させようと努めてきた。しかし中国はこれまで、当該地域における米国との潜在的な競争にばかり注目し、日本の役割を軽視していた。中米間が争うことで、最終的に日本が利益を得た」と語る。

 ▽最大の勝者は日本

 記者:このほど閉幕したEASの成果について総合的に評価してください。

 劉軍紅:我々が想像したほど楽観的な状況ではない。米国・ロシアの参加による影響は多方面に及び、長期化するだろう。今回のサミットの成果は主に3つある。1つ目は海上安全保障問題に関する共通認識。2つ目は「ASEAN+3」から「ASEAN+6」へのFTA拡大。3つ目は中日韓FTA産官学共同研究を早期に始める方針を確認したことだ。

 記者:日本は今回、東南アジアのインフラ建設だけでも250億ドルの援助を承諾するなど、大きな動きを見せました。

 劉軍紅:日本は総事業費2兆円規模のインフラ整備に対し支援を表明した。これには建設、衛星提供、防災・減災体系、予報などが含まれ、ASEANで日本モデルの普及を推進していく。日本は今回のEASにおける最大の勝者と言える。

 記者:それはなぜですか?

 劉軍紅:野田首相が帰国前に語ったように、今回日本の外交戦略は基本的に成功を収めた。ここ1年間の外交努力、会議の議事日程と議題、各国の駆け引きなどから判断するに、日本は所定の目標を基本的に実現したと言える。

 日本の目標は大きく分けて3つある。1つ目は、米ロのEAS参加後、多国間の安全保障問題に関する議題の討論を促進し、中国の戦略的メリットを抑制すること。2つ目は、ASEAN+3からASEAN+6への枠組み転換を図ること。3つ目は、ASEANのインフラ建設を効果的にコントロールすること。

 結果、中米両国がEASから得たものはほとんどなく、ASEANはいくつかの承諾を取り付けただけだったが、日本は実益と戦略的メリットを獲得しただけでなく、米国の正面攻撃を回避し、矛先を中国に向けさせることに成功した。この点から見るに、日本の策略は成功したと言える。

▽日本、うまく立ち回って「ASEAN+6」への拡大に成功

 記者:将来の東アジアの主導権についてはどう見ますか?日本が重要な役割を果たすでしょうか?

 劉軍紅:そうだと言える。表面上は米国が主導権を握るように見えるが、米国は東アジアの枠組み内で経済協力について話し合いをするのではなく、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を推進していく。これにより、日本はこの枠組みの中で矛盾を利用しつつ、事実上の指導権を握ることができるようになる。実は日本はすでにそれを実行している。日本はサミット前にTPP交渉への参加を宣言し、東アジアを動揺させた。もし日本、メキシコ、カナダがTPPに参加すれば、TPP参加国のGDPが世界全体の39%を占めることになり、ASEAN+3のFTAの影響力が下がるからだ。そこで日本がASEAN+6にしたらどうかと提案したところ、各国は皆同意し、結局思惑通りとなった。

 実際、日本はTPPという「てこ」を使ってEASを動かした。日本はまだTPP交渉に正式に参加したと宣言したわけではない。正式な参加は理論的にはまだ6カ月先のことであり、来年春以降にならないと確定しないのだ。

 記者:中国はTPPをどのように見るべきでしょうか?

 劉軍紅:これは一種の駆け引きと言える。まず基本的な判断が必要だ。まず、TPPが合意に達したと仮定すると、中国に対するマイナス影響はどれくらいなのか。もう1つは、もし中国も参加したらどうか、実行可能性はあるのかということだ。現在のところ、実行可能性はあきらかに無いと言える。関税だけをとっても、現在の中国の関税は米国を大幅に下回っている。

 百歩譲ってもし合意に達したとしても、TPPの効果が現れるのは各参加国と中国との間で経済貿易関係が生じたときだけだ。しかも現在の関税水準を上回ることはなく、3-4年の緩衝期間もある。こうして見ると、中国はTPPにうろたえる必要はなく、動きを静観するという態度でいればよいことが分かる。ただし、ASEANとの関係を引き続き深化させる、ASEAN+3を動揺させない、という2つの原則が必要だ。

▽真のライバルは日本

 記者:中国はこの変化にどのように対応すべきでしょうか?

 劉軍紅:我々は反省するべきだ。中国はこれまでずっとASEANと緊密な関係を築こうと努めてきたが、現在、この努力は全く報われていない。これは自国にも原因があり、改善の必要があるが、一方で、ライバル国による瓦解の動きを軽視してきたことも原因だ。我々を瓦解させようとするライバル国は、実は日本であり、これまであまり重視してこなかった。

 これからは、過度に理想的な考え方や物言いを調整すべきだ。例えば現在、中国は米ドル体制に挑戦する能力が全く無いのだから、米ドル体制を変化させようとする考えを提起する必要は無い。また、金融危機にかこつけて米国の経済成長モデルを批判する必要もない。そんなことをすれば、米国が中国に対して小細工をしかけ、その他の小国が動揺するだけだ。中米が互いに争えば日本が得をする。これは中国の真の利益を失うことにつながる。

 日本が行っているのは戦略的な瓦解もあり、戦術的な瓦解もある。今回のサミットのほかにも、日本はこのほど、20年ぶりに東京証券取引所などの取引時間を30分延長した。これは、アジア金融市場で日本の影響力を拡張させようという意図の表れであり、日本円にアジアでの主導権を握らせようという意図は明らかだ。

 地域協力において日本の戦略は変わらず、その方向性を堅持している。一方で1997年以降、中国の地域協力における戦略的メリットは基本的に瓦解された。日本が2006年に定めた「ASEANをすばやく攻略し、中韓をけん制し、東アジア共同体の主導権を握る」という目標は、今日も基本的にその方向を維持し続けており、ますます好調と言える。(編集SN)


(引用終了)


 日本政府に劉氏が警戒するような強い戦略的意志があったかどうか甚だ疑問だ。買い被りすぎではないか。
 
 政権延命のために、対米追従を決め込んだ野田政権が、サミットを機に外交攻勢に出たアメリカの対中政策に乗っかって利益を得ただけのように思える。アメリカ政府が推進するTPPも、日本経済に対する、中国の経済的影響力を減殺し、衰退著しい自国経済の強い影響下に置いておきたい、という側面が強いだろう。
 私には、劉氏の分析は、むしろ支那人の人間観の現われではないかと思える。

 歴史を振り返ってみれば、覇権国家が世界規模の覇権を長期的に維持しようと思えば、日本との同盟が欠かせない。
 栄光ある孤立を捨てて、日本と対等の同盟を結んだ大英帝国は、大陸における覇権争いの最大のライバルであったロシアを衰退させる事に成功、長期のパックス・ブリタニカを実現させた。
 この挟み撃ちによるユーラシア大陸第一ハートランドの崩壊は、共産主義国家・ソ連の誕生という、新たな脅威を生み出すに至るが、直接的には、第二ハートランド・ドイツ帝国の膨張という危機を生んだ。これが第一次世界大戦、そして第二次世界大戦の勃発というヨーロッパの荒廃、大英帝国の衰退へと繋がってくる。
 そこに付け込んだのが、新興の覇権主義国家・アメリカだ。
 アメリカは大英帝国を乗り越えると同時に、これを利用して、太平洋を挟んで同じく勃興しつつあった大日本帝国を叩き潰すという世界戦略を成し遂げて、パックス・アメリカーナの実現に乗り出すが、これに挑戦することになったのが、第二次世界大戦の終結直前までは仲間と思われていた第一ハートランド・ソ連の勃興である。

 ソ連の勃興は、支那や共産主義に幻惑されていた、フランクリン・ルーズベルトに象徴されるアメリカ政治への寄生によるところが大きい。
 ソ連は満蒙を隔てて対立していた日本を、中国共産党を動かして泥沼に引きずり込み、コミンテルン(共産主義によるインターナショナライズ機関、第三インターナショナルともいう)のスパイを動かして、日米関係を衝突へと誘導して行った。
 日本国内の工作では、近衛内閣に食い込んだゾルゲ諜報団が有名だが、アメリカ国内においては、ルーズベルト政権に食い込んだ財務省高官ハリー・デクスター・ホワイトが有名だ。
 原爆の技術もアメリカに忍び込んだソ連のスパイがいち早く持ち込んだものだ。
 日本との戦争中にソ連スパイ網の存在に気づいた米軍の諜報機関は、ヴェノナ作戦と呼ばれる極秘プロジェクトを立ち上げ、理論上解読不可能とされた、ソ連の暗号の一部解読に成功している。これを足がかりとして、戦後、マッカーシズムと呼ばれるレッドパージは行われた。
 日本では逆に、公職追放といわれるパージが行われて、戦前・戦中の日本において公的責任を負っていた人々が次々と公的機関から追われていった。日本の公的機関が無責任者の巣窟となっていったのはここに遠因がある。
 アメリカは後にその過ちに気づくが、時すでに遅しで、結局、多くの赤と呼ばれる無責任者が日本の公的機関の中枢に入り込んでしまった。
 自民党政治の末期的現象と政権交代による民主党政権の誕生はその集大成といっていい。


 話がそれた。 

 ともかくワシントン会議において日英同盟がアメリカの策謀によって廃棄させられると、大英帝国の栄光は、あれよ、あれよ、という間に、その威光を失っていった。
 そして、日本を侵略し、日米同盟という片務契約を結んで、これを保護国化したアメリカは、これまで世界覇権を維持してきたのである。(日米同盟は条文上、或は軍事上は片務だが、政治的には片務とは言えない同盟だ。アメリカは日本を植民地同様に扱っているが、日本は多大の犠牲を払ってアメリカの世界覇権を支えてもきた。覇権国家としては衰退した英国も同様の関係をアメリカと結んで、これを支えている。)

 これに今、挑戦しようとしているのが中国である。
 世界の覇権を維持したいアメリカと、長期的にアメリカから覇権国家の地位を奪い取りたい中国にとって、日本を傘下に置けるか否かは、いまや死活問題と言っていいだろう。
 なぜなら、今や中国は国内の矛盾が暴発寸前で、すでにその兆しを見せているバブルの崩壊が引き金になりかねない事態となっているし、アメリカはアメリカで、長期の経済的没落が避けられない状況となっているからである。これは軍事予算を長期的に縮小せざるを得ないということだ。
 
 しかし、アメリカ経済は中国経済と骨がらみとなっており、この面からいえば対立は避けなければならないにもかかわらず、今回の東南アジアサミット開催を機に、外交攻勢に出た。事態がそこまで煮詰まってきていることの現われだろう。
 ひとまず、ハワイ以西を勢力圏下に置くことを目標にしている中国に対して、ようやくアメリカはノーの回答をなしたことになる。しかし、それは、これまで日本列島にあった防衛ラインを、グアム‐オーストラリアのラインまで下げて、という戦略の練り直しと一体となっているようだ。アメリカは虎の子の海兵隊の後退を実行に移している。


 日本列島周辺に生じた、この軍事的空白を誰が埋めるのかが、日本にとって喫緊の課題となっているのである。
 日本列島は今後、あからさまに米中という覇権国家の角逐の地となっていく。

 こういった中で、前掲の劉氏の指摘するような事態は起きた。
 日本は結局漁夫の利を占めたわけだが、日本の頭脳に漁夫の利を占めるという確固たる戦略があったとは思われない。

 細かな分析は専門家の仕事だが、このような結果になったについては、伝統という観点から見て、日本文明の性質に起因する二つの要因があったように思われる。

 一つは、日本の実体経済の強さ、一つは日本固有の文化「国際化」である。

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