「征韓論政変の謎」(海鳥社)伊牟田比呂多

 著者の伊牟田氏は、幕末西郷隆盛の密命を受けて江戸に赴き、浪士を使った幕府への挑発を実行したとされている伊牟田尚平の子孫の方でしょうか。西郷南洲顕彰会の機関誌「敬天愛人」誌によく記事を書いておられます。前掲書はその伊牟田氏が書いた征韓論政変に関する著作ですが、政変の謎に挑んだ研究書というよりは、毛利敏彦氏の「明治六年政変の研究」の延長線上にある概説書といった趣があります。ですから入門者としては、毛利氏の著作から入るよりは、この「征韓論政変の謎」から入るほうが、このテーマには入りやすいかもしれません。
 伊牟田氏は毛利氏の説を踏襲して、西郷隆盛が政変前夜太政大臣三条実美に提出した「朝鮮国御交際の始末」という文書を重視して、彼が主張したのは征韓論という好戦的なものではなく、礼節遣韓論であったと結論付けています。また政変で反対側に立った大久保については、否定的に捉えているようです。西郷・大久保が竹馬の友であったとする通説にも疑問を投げかけております。
 確かに西郷隆盛が閣議において主張したのは、礼節使節派遣論なのは間違いありません。しかしそのことが征韓ということと思想的に矛盾するのかどうかに関しては、検討されておりません。彼が板垣に主張した使節暴殺から軍隊派遣という流れは必ずしも使節派遣論とは矛盾しない可能性もあるのではないでしょうか。
 私はやはりここにも戦後日本を覆った朝鮮半島への贖罪意識というものが作用していると見ています。つまり征韓論=悪、西郷隆盛=善という意識が政変の本質を見る目を歪めているのではないかということです。すなわちそれは歴史という鑑そのものではなく、そこに映った戦後日本人の姿なのではないかということです。
 そこのところを思想的に問い詰めて史実を見て行かないと、歴史の真実に迫ることは出来ないのではないでしょうか。それは西郷隆盛という英雄を大衆の好むところに引き摺り下ろしていることになりますまいか。



征韓論政変の謎
海鳥社
伊牟田 比呂多

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明治六年政変 (中公新書 (561))
中央公論新社
毛利 敏彦

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著者:伊牟田比呂多出版社:海鳥社サイズ:単行本ページ数:240p発行年月:2004年12月この著者の

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トライライン
2009年12月30日 16:37
『台湾の高校の、韓国 教育旅行』 その1

 國立竹北高級中學
 
 http://www.cpshs.hcc.edu.tw/95jp/index.htm

  日本 韓國教育旅行活動之旅

   辦理日期: 93學年度(2004/07/15)~2004/07/19)
   活動名稱: 本校至韓國忠南高中教育交流訪問(大田市)
   參與人數: 本校學生7人,師長9人(學生進行Home Stay訪問)
   Photo:
   Video: (14M)
   全體合影 picture1 訪問成員
     ( http://www.cpshs.hcc.edu.tw/95jp/100_0823.JPG )
   花絮報導: 音樂人(才華洋溢)
   新聞剪影: 報導一 報導二

 この続きは、
  http://nozawa22.cocolog-nifty.com/nozawa22/2009/10/post-400f.html?cid=40927794#comment-40927794
   征韓論から太平洋戦争まで 加藤陽子
    2009年10月28日 コメント をお読みください。

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  • 真日本主義・征韓論

    Excerpt: 「真日本主義・近代との遭遇」について  近現代の日本外交を一貫してつらぬいてきたのは、国際法遵守の基本方針だった。とりわけ、その基本理念への忠誠は、この国の外交の基本だったと思う。もちろん時代は現代で.. Weblog: 罵愚と話そう「日本からの発言」 racked: 2008-05-20 05:35