新西郷南洲伝

南洲とは西郷隆盛の雅号です。西郷隆盛は奄美大島他二度の遠島の経験があり、自らの雅号を南洲(南のしま)としたのです。この人物は誰でもその名前を知り、上野の銅像でも親しまれていますが、その人物評価は一定しておりません。崇敬の対象になる一方で、逆に毀誉褒貶の対象にもなっています。その人物像はほとんど謎であると言ってよいでしょう。私はその謎を解いて、世に問うために西郷南洲の史伝を近日出版するつもりです。私は現在の日本にとって彼の人物を解明することは、急を要する問題だと思いますが、以下なぜそうなのかを記していきたいと思います。
 明治のクリスチャン内村鑑三は、日本のことを西欧に紹介した著作『代表的日本人』において、冒頭で西郷南洲を取り上げ、「維新革命における西郷の役割を十分に記そうとすれば、革命の全史を記すことになります。ある意味で一八六八年の日本の維新革命は、西郷の革命であったと称してよいと思われます」と言っています。内村鑑三はクリスチャンとしての直感でこのように言っているかと思いますが、西郷南洲の言動とその果した役割を綿密に検証していくと、この表現が非常に妥当なものであることが分かります。
 また明治から昭和にかけての言論界の巨人徳富蘇峰は、大正十五年の西郷南洲先生五十年記念講演会において次のように言っています。
「国民がその国の偉人、その国の豪傑、そういう人々を尊敬し、嘆美し、従って崇拝することの出来る間は、その国民は、まだ血が通っている国民である。他にいろいろ弱点があっても、欠点があっても、醜態があっても、幾らか取柄のある国民である。」
 大東亜戦争敗戦までの日本人は確かにこうでした。日本人は危機に際して常に西郷南洲を想起してきたし、国民全般の意識において崇敬されてきました。しかし現在はどうでしょうか。大型書店の歴史のコーナーを覗いてみれば、西郷南洲を正面から扱った新刊本はほとんどない状況です。敗戦を境に我々日本人の意識は、大きな変貌を遂げ、西郷南洲という人物を理解できなくなってしまったのです。徳富蘇峰の表現を借りるなら、血が通わない国民になってしまったということになります。ここに言う血が通わないとは、歴史・伝統との断絶と言い換えることが出来るでしょう。
 また徳富蘇峰は言っています。
「しかしながら、偉人を偉人とせず、豪傑を豪傑とせず、崇拝、嘆美、称讃、欽慕というようなことを、一切除外してしまうような国民になった時には、最早これは済度し難きものであると思います。私は、南洲翁を慕うという国民の心が実に有難い。こういう心がある間は、日本はまだまだ大丈夫である。これが無くなる時には、恐らくは国が亡びる時と思います。」
 なんと予言性の高い言葉でしょう。現在我々が直面している多くの問題が、これを示唆しています。いまや新聞やニュースで目にする事件・政治・社会現象などに、多くの人が日本の衰亡の兆しを感じ取って、不安を抱いているのではないでしょうか。
 実は明治の初期において、すでに西郷南洲がこれを予見していたことは、『西郷南洲遺訓』を読めば分かります。遺訓において西郷南洲は次のように言っています。
「広く各国の制度を採り、開明に進まんとするならば、先ず我が国の本体を据え風教を張り、そうして後、しずかに彼の長所を斟酌するものぞ。そうせずしてみだりに彼に倣ったならば、国体は衰頽し風教は萎靡して匡救(ただし救う)すべからず。終に彼の制を受けるに至らんとす。」
確かに大久保ら西欧外遊組の敷いた政治路線は、日露戦争の勝利や効率的な近代化などの政治効果を挙げましたが、逆にその性急な近代化は我が国の本体を傷付け、これを脆弱なものにし、流入してくる西欧文化の奔流に流され、結果大東亜戦争の敗戦によってその本体をへし折られることになりました。以後の日本は西欧、特にアメリカに制せられ続けているといっても過言ではありません。西南戦争は、その文明史的意義を一義的に定めることはできませんが、こうした流れへの抵抗という側面が確実にあります。
 では我々日本人はどうすればよいのでしょうか。小手先の改革や小賢しく立ち回ることで克服できないことは眼に見えています。もちろんこの上西欧を見習った改革を行うことは倒錯も甚だしいとしなければなりません。やはり西郷南洲が言うようにまず我が国の本体を据え風教を張るところから始めなければならないでしょう。そのためには、その前段階として、我が国の本体、国体を明らかにする必要があります。その鍵を握るのが、西郷南洲であり、その彼が中心となって進められた明治維新という革命なのです。そこに今西郷南洲の史伝を世に問う意義があるのです。(つづく)





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