西郷隆盛

アクセスカウンタ

zoom RSS 賢人百官を総べ… 【西郷南洲翁遺訓解説】第二条

<<   作成日時 : 2016/10/14 16:46   >>

面白い ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

賢人百官を総べ、政権一途に帰し、一格の国体定制なければ、縦令(たとえ)人材を登用し、言路を開き、衆説を容るる共、取捨方向なく、事業雑駁にして成功あるべからず。昨日出でし命令の、今日たちまち引き易(か)うるという様なるも、皆統轄する所一ならずして、施政の方針一定せざるの致す所なり。

(大意)賢人が多くの官吏を総べ、政治権力が一つとなって、一つに定まった国の体制を持っていなければ、たとえ人材を登用し、言論の道を開いて衆説を容れても、取捨選択する一つの方針がなく、事業はてんでばらばらになって成功などおぼつかない。昨日出た命令が今日たちまち変更されるというのは、皆、統轄する所が一つではなく、施政の方針が一定していないところからきているのである。

【解説】第一条で説かれたように、人を推服させるような大変優れた賢人が、徳によって選挙され、適切に配置された官吏を統括する。その前提として、かつて幕府から政権を奉還させ、公家と武家が融和したように、皇室の下、権威と権力が一致一和し、一つに定まった国体(国柄)とそれに適合した制度を持っていなければならない。そうでなければ、たとえ人材を登用し、優れた言論が行われる道を開いても、方針が一定しないことで、各部門間の有機的連携が成り立たず、混乱を極めるばかりで各事業ばかりでなく、例えば富国強兵といったような大事業が成功するはずもない。
 翁の言動から察するに、これはひとまず討幕を終え、鹿児島に戻っていた明治三年前後の談話のように思われる。倒幕は成ったものの、王政復古はいまだ大号令を渙発し、版籍奉還を成したに過ぎなかった。これらは名を天下に正したにとどまり、藩組織は実質的には温存されている状態で、政府が下した軍制改革の命令に従って各藩の軍備は以前より増強されていた。彼らの新政府に対する不信と不満は蓄積している状況で各藩はむしろ割拠の勢いにあったのである。一方の新政府には、諸藩から献上された兵はあっても、自前の兵を持っていなかった。もちろんそれを賄うだけの財源も持たなかった。そういった状況にありながらも 新政府官吏にはすでに腐敗の兆候が見え隠れしていたのである。
 当然のことながら、これらの情報は鹿児島にも達していた。倒幕と王政復古の第二段階ともいえる廃藩置県のはざまの時期に、翁は倒幕よりも王政復古事業の困難はこれからと見て、これらの問題を語っているのである。

 この問題について翁が具体的に語っていると思われる書付があるのでその内容を紹介しておくことにする。
 明治三年十二月、翁は各藩の状況視察のため出発しようとしていた同藩士坂元純熙に対し注意すべき点について書きつけたものであるという。

 翁はまず横井小楠の「国是三論」を引き合いに出して、藩政の善悪を見極めるための要点を書いている。
 その要点とは、士の容体が質朴であるか否か、町家の繁栄具合、農政が行き届き民心を得ているか否か、の三点である。第の一点は士風が盛んかどうかを表し、第二の点は藩の富み具合を表し、第三の点は仁政の行われ具合を表している。
 これらに加えて、小楠が長州の村田清風から教わった着眼点として、市中の売り物に玩物が多いか否かという一点が挙げられている。これはその藩風が奢美かどうかを表すという。

 翁はこれらに加えて次のように書きつけている(意訳)。

「現在の天下の形勢では、各藩で富国強兵を論じない者はいないが、その根本を立てているところは少なく、藩を富ますと言えば利を起こす事という、枝葉のことばかり考えて、その利は藩の利にならず、かえって一害を増すことも少なくない。ひたすらに商いの方法に心を配り、国家の経済を失うことも多く、その弊害は救うことができない勢いとなっている。それを避けるには、第一に明君と呼ばれる人が国家を振起した事跡をよくよく玩味すべきで、例えば米沢藩主上杉鷹山・熊本藩主細川重賢・水戸藩主徳川斉昭などの明君が、事を好むのではなく、やむをえざるところから事業を起こしたことを弁えておかなければ、事業の目的を取り違えることになってしまう。
 第一に着手すべきは、君側後宮の間に多い目に見えぬ浪費をなくすことである。そうでなければ、藩中枢の因循の病を治して、改革に臨ませることはできず、どんなに利を得ても費えは止まらず、目に見える弊害を改革で取り払ってもその分だけ効果は減殺されて十分な成果は挙げられない。
 国家の大経済においては、収入と支出を定め、貯蓄を持ち、救荒に備え、軍備を設けるという、これらを優先的に達成している国というのは、必ず根本がしっかり立っている国で、利を起こす事はこれらの遊軍(自由に動いて、上に挙げた国家の根幹を助ける働きをする)となる。そういう国には必ずそれを指導している人物がいるから、その人を探し求め、国を興す本旨とその起こした事業の始末を詳しく尋ねるがよい。
 現在、国を富ますと言って利を起こしては、奸商の計策に陥って不利益ばかり多く、また兵勢を起こすと言って、少し兵隊振るい立てば、政府は驚き、兵隊を邪魔もの扱いするところも少なくない。趣意が立たず、本旨を見失っているがゆえにこのような体たらくに陥っているので、今日、兵隊が盛んであるかどうかは、兵隊の目的をどのように立てているか、政府に力をつけ、国家を維持するものは兵隊、とこのようにちゃんとなっているか、よくよく観察すべきところである。そうでなくては一端興起しても却って国家を危機に陥れることは当然の成り行きであるから、兵勢が盛んであるとは申しがたい。弊害を破るのも、事を起こすのも、初めの主意こそが肝心で、事業の恰好がつくかどうかは、仕業などではなく、主意によって決まる。その本志を尋問すべきである。現在の急務は以上に尽きている。その他の小さな項目については、この大体より推して知るべし、である。忠恕一貫、これ以外の選択肢がどうしてあろうか。」(『西郷隆盛全集』第四巻) 
 
 以上の翁の訓戒を、上記の遺訓第二条の言葉を用いて、思いっきり要約すると、根本の立ち、今日の急務である富国強兵がちゃんと進められている国では、必ず政権が一途に帰していて、一格の国体定制があるはずで、その中で官僚を総べている賢人が必ずいるはずであるから、その人に会い、施政方針、その主意を尋ねよ。こうなろう。
 翁はこれをどこまでも藩の問題として論じているが、やがて日本国家レベルに応用されるべき思想であることは明らかだ。廃藩置県後、翁はこの視点で日本国家レベルの問題に取り組んでいったとみていい。そこで様々な問題にぶつかることになるわけである。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
面白い
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
賢人百官を総べ… 【西郷南洲翁遺訓解説】第二条 西郷隆盛/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる